英国Sopwith & Co.のアンティークデスクに残るブラマ錠とは?歴史・構造・価値を詳しく解説

先日、当店にイギリス・ニューカッスルの名門家具メーカー「Sopwith & Co.(ソップウィズ社)」が製作した大型のプレジデントデスクが入荷しました。

オーク材をぜいたくに使用した重厚な佇まいと、アーツ・アンド・クラフツの影響を感じさせる端正な造形が魅力の一台です。

細部を確認していると、一般的なアンティーク家具ではあまり見かけない、少し変わった形の鍵穴が残されていることに気がつきました。

このデスクに取り付けられていたのが、イギリスの錠前史に名を残す「ブラマ錠」です。

私が知る限り、これまで当店で取り扱ってきた家具の中にもブラマ錠を備えたものはなく、今回初めて実物に触れることができました。

今回は、Sopwith & Co.のアンティークデスクに残されたブラマ錠を通して、その歴史や構造、家具としての価値、現代で使用する際の注意点をご紹介します。

アーツ・アンド・クラフツの造形美が光る、名門Sopwith & Co社製の大型オークプレジデントデスク【d67】

ブラマ錠とは?

ブラマ錠とは、18世紀後半にイギリスの発明家ジョセフ・ブラマによって考案された、精密な構造を持つ錠前です。ジョセフ・ブラマは1784年にロンドンで錠前事業を始め、従来のものとは異なる独自の機構を開発しました。

一般的なアンティーク家具の鍵には、平たい板状のものが多く見られます。一方、ブラマ錠の鍵は先端部分が円筒形になっており、その縁には深さの異なる切り欠きが設けられています。

鍵を鍵穴へ押し込むことで、内部に配置された複数のスライダーが異なる距離だけ移動します。すべてのスライダーが正確な位置にそろったときにだけ、シリンダーを回して解錠できる仕組みです。

ひとつでも位置が合わなければ、錠前は動きません。複数の部品を同時に正しい位置へそろえる必要があるため、当時の一般的な錠前と比べて、非常に高い防犯性能を備えていました。

当店で撮影した写真をもとにAIでイメージ画像を作成しています

約67年間破られなかった「挑戦錠」

ブラマ錠の名を広く知らしめたのが、ロンドンにあったブラマの店舗に展示された「挑戦錠」です。

ブラマは、自らが開発した錠前を店の窓に掲げ、鍵を使わず、錠前を壊さずに解錠できた者には200ギニーを与えると宣言しました。

当時としては非常に高額な賞金でしたが、長い間、これを開けられる者は現れませんでした。

挑戦錠がついに開けられたのは、1851年に開催されたロンドン万国博覧会の時代です。

アメリカの錠前師アルフレッド・チャールズ・ホッブズが挑戦し、合計約51時間もの作業を重ねて、ようやく解錠に成功したと伝えられています。

ブラマ錠が発表されてから、実に約67年後のことでした。

絶対に開けられない錠前ではありませんでしたが、18世紀に生まれた仕組みが半世紀以上にわたって高い防犯性能を示したことは、当時の設計と金属加工技術の高さを物語っています。

19世紀の著名な錠前破り師、アルフレッド・チャールズ・ホッブスの写真
Samuel Orcutt, Public domain, via Wikimedia Commons

Sopwith & Co.がブラマ錠を選んだ理由

今回の大型デスクを製作したSopwith & Co.は、ニューカッスルにおける家具・建具製作の歴史と深く結びついたメーカーです。家具の外観を美しく仕上げるだけでなく、収納性、防犯性、使い勝手まで考えた製品を手掛けていました。

今回入荷したデスクも、左右に多数の引き出しを備えた大型のプレジデントデスクです。契約書や帳簿、手紙など、仕事に関わる重要な書類を整理し、使用者の手元で管理するために作られたと考えられます。

ブラマ錠は、一般的な錠前より構造が複雑で、高い加工精度を必要とします。

それでもこの錠前を採用したことから、デスクの外観だけでなく、内部に収めるものの安全性まで重視していたことがうかがえます。

かつての所有者が何を保管していたのかは分かりません。重要な契約書や資産に関する資料、誰にも見せたくない私的な手紙が収められていたのかもしれません。

大型オークプレジデントデスク【d67】を開錠した状態

なぜ古いブラマ錠は修復が難しいのか

高い防犯性能を備えたブラマ錠ですが、100年以上を経たアンティーク家具で使用する際には注意が必要です。

最大の理由は、構造が精密であるからこそ、わずかな摩耗やずれでも正常に動かなくなる可能性があることです。また、主要な部品が円筒形の内部に収められているため、外から状態を確認しにくい点も問題です。現代の一般的な錠前のように、規格に合った部品へ簡単に交換できるものでもありません。

今回出品したプレジデントデスクのブラマ錠と専用鍵は現在正常に動作しています。

しかし、内部には外から確認できない経年劣化が存在する可能性があります。

そこで当店では、ご購入を検討されるお客様に二つの方法をご提案しています。

AIによるイメージ画像です

1.オリジナルのブラマ錠を保存する

ブラマ錠と専用鍵を、当時の姿のまま残す方法です。

家具の歴史やオリジナル性を大切にしたい方に適しています。

ただし、故障のリスクを抑えるため、日常的な施錠は避けることをおすすめします。

鍵は頻繁に使用するものではなく、当時の技術を楽しむためのものとして、慎重に扱っていただくのが安心です。

2.日常使用を優先した仕様へ変更する

毎日の仕事で気兼ねなく使いたい場合には、ブラマ錠を使用せず、取手とローラーキャッチなどで開閉できる仕様への変更をご提案しています。

ローラーキャッチを使用すれば、鍵をかけなくても引き出しを閉じた状態に保つことができ、必要なときには簡単に開けられます。

取り外したオリジナルの錠前と専用鍵は処分せず、将来元の仕様へ戻せるよう、家具と一緒に大切に保管していただきます。

外観の美しさをできる限り損なわず、日常の利便性と安心感を高めるための方法です。

アンティーク家具は、ただ古いだけの道具ではありません。

そこには、当時の職人が磨いた技術、その家具を注文した人物の考え、長く使い続けてきた人々の時間が積み重なっています。

今回のSopwith & Co.製デスクに残るブラマ錠も、その歴史を伝える大切な一部です。

18世紀に生まれた精密な錠前技術が、ニューカッスルの家具メーカーが製作したデスクに採用され、100年以上の時を経て当店へ届きました。

家具の状態と、お客様がどのように使いたいかを確認しながら、最適な方法を選ぶことが大切です。

私たちは単に家具を販売するだけでなく、数年後、数十年後にも「このデスクを選んでよかった」と思っていただけるよう、家具の歴史と実用性の両方を考えたご提案を続けていきたいと考えています。

今回ご紹介したデスクの詳細や、ブラマ錠を残す場合と仕様を変更する場合の違いについては、どうぞお気軽にお問い合わせください!

*

*

*

---------------------------------------------------------------

アンティーク家具・照明・シャンデリアのパルテノン

〒520-0511 滋賀県大津市南比良467
TEL:077-592-8577
営業時間:10:00~17:00
定休日:火曜日・水曜日

info@parthenon-antique.com

---------------------------------------------------------------

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA